館長最後のブログ

1年前から退職の日が決まっていたので秋にでもなれば仕事も減って、それまでの惰性で軽く流せば楽な日々が送れるだろうと考えていた。忙しいからとオープン当初は断っていた講演依頼も9月からは応じていたし、好きな釣りでもまた少しずつ始めたいものだと思っていた。

しかしそう世の中甘いものではなかった。押し寄せる津波のような多くのお客様、日々日本各地から取材に来る報道関係者や、新聞テレビ雑誌などのインタビュー、少しのつてを頼りに私に館内の案内を頼む友人知り合いなどなど、とうとう引退の日まで目の回るような忙しさは続いてしまった。

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・最後の最後まで忙しい日が続いていった。

引退の3月の31日が近づくに従って多くなったのは、別れを惜しんで会いに来るファンや友人だった。手に手に花束やお菓子お酒を持っていた。事務室が花の香りでむせ返るほどになってしまった。

30日はあの有名な「さかなクン」とその家族が来てくれて、突然の来訪で驚かされた。手描きの絵を立派な額に入れたものや、巻紙状の長い紙にびっしりと種類別にクラゲの絵が描かれていた物などを頂いてしまった。

各界から引っ張りだこの彼は超忙し人間のはずだったが、うまい感謝言葉が見つからなかった。

31日には苦楽を共にした職員の温かい心のこもったお別れの会が計画されていた。いったいこの俺が何でこんなに多くの人に感謝されるのだろう。特別に何かした覚えもないし普通にいつもと同じに接していた方々である。しかし訪れたのは県外からの方も多かった。

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・水族館職員の皆が送別会を開いてくれた。

人の評価は死に際にわかるといわれるが、仕事を辞める時も似たようなことが言えるとしたら・・・こんな幸せなことはない。これから始まる「草むしり人生」も心地いい思い出に浸りながらやれそうだ。

長く館長を務めたが政権が変われば方針も変わる。人は皆顔が違うように考えも違う。同じ目的に向かうにしてもやり方は皆違うのだ。また大きな夢を皆で描いて一致団結して頑張ってくれるだろう。それを我が家からながめるのも楽しみだ。

長い間私の書くブログを多くの方が楽しみにして読んでくれた。そして我がクラゲ水族館を心から応援してくれた。有り難いといつも思ってきた。

しかし何事にも終わりはある。館長を引退したわけだしこれからを担う若い館長、職員がいる。また中の誰かが面白いブログを書いてくれるだろう。「チャンスが有ればまた引退後の日々でも書いてみたい」との思いがあるが、ひとまず「老兵は死なず、ただ消え去るのみだ」との言葉を私も倣うことにする。

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