加茂水族館を訪ねて

私が加茂水族館と初めて接触したのは2002年のことだったと思う。その頃ちょうどクラゲの飼育がヨーロッパの水族館で普及しはじめたことから、私たちベルリン水族館は他の水族館と協力し、クラゲの繁殖プログラムを確立したいと考えていた。そのため、私たちは加茂水族館とも連絡を取ったのであった。ただ、言葉の問題と地理的な距離の問題で、なかなか親密な付き合いとはならなかった。

しかし、ここ数年の間に、私が行っている国際プロジェクトの日本人パートナーから加茂水族館についていろいろと聞くことができた。彼は私に加茂水族館が行っているクラゲの素晴らしい維持管理の成果について教えてくれた。そしてありがたいことに、今回北日本を訪れる旅の途中で、山形に立ち寄り、加茂水族館に行けるようにも手配をしてくれた。

私はクラゲを専門にしているというその水族館を見たいと思っていた。とはいえ、クラゲの展示水槽がいくつか並んでいるだけの小さな水族館を想像するだけで、今まで私が見たことのないクラゲが少しは見られるだろうとは思っていた。

ところが加茂水族館に到着して非常に驚いたのは、その水族館は主にクラゲを展示していて、他の動物は少ししかいないということだった。そのような状況を夢見たことはあったが、実際に加茂水族館を見るまで、まさか水族館がクラゲだけで成功を収めることができるとは思っていなかった。

加茂水族館には多くの種類のクラゲが展示されていること、それらの展示水槽が見事に配置されていることを知り、さらに驚き、深く感心した。ヒドロクラゲや有櫛動物のような小さくて優美な種が、ユウレイクラゲやエチゼンクラゲのような巨大でパワフルなクラゲへと変化していく。また、水槽の照明が変わることで、クラゲの印象がまったく異なるものになっていく。

神秘的な照明と展示水槽の印象的な配置だけでなく、その展示自体も見事な教育ツールとなっていた。ストロビラや稚クラゲの成長などミズクラゲの生活環を観察できるコーナーがあり、顕微鏡やルーペを使って小さなクラゲを観察して楽しむことができる。さらにプランクトンやクラゲを餌としてクラゲに与えるショーも素晴らしい教育ツールとなっている。

驚きと感銘を受けたのは水族館全体がたった一つのテーマ「クラゲ」を扱っているということだ。展示だけクラゲに焦点を合わせるのではなく、おみやげのあらゆる商品がクラゲに関連している。レストランまでもがクラゲを提供し、クラゲを使った様々な料理が注文できる。カプチーノの上にまでクラゲが乗っている。

加茂水族館は展示から維持管理までこのように一つのテーマに忠実に取り組んでいる世界唯一の水族館であるに違いない。

私は一般の来館者としてではなく、外国人の同業者として加茂水族館を訪れ、舞台裏を見るチャンスにも恵まれた。ここで私はバックヤードの広さや清潔感、そしてクラゲ繁殖用水槽の数の多さに実に感動した。水族館の外の海で新たにクラゲを捕まえる方が簡単なことはわかっているが、加茂水族館はできるだけ多くのクラゲを展示用に、あるいは他のクラゲの餌として、また研究目的で繁殖させている。従って、研究テーマの一つが日本ではなくパラオで採集したクラゲで、その遺伝的な多様性や違いを調査するために現在加茂水族館で繁殖させている、ということも何ら不思議ではない。このような本来の生息地から遠く離れた場所での研究は、この加茂水族館のように論理的かつ科学的な飼育繁殖の技術基盤があるからこそ可能である。

見学の最後に村上館長と奥泉副館長はクラゲの様々な維持管理の問題について話してくれた。世界中どこにでも同じような問題はある。また私は加茂水族館の歴史を教えてもらい、近い将来新水族館建設の予定があると聞いた。それはまたもう一つの驚きであった。小さな普通の水族館が独自のクラゲ水族館に少しずつ発展していくことは容易に理解できるが、クラゲ専門の大きな新しい水族館の建設となれば、非常に大きな一歩を踏み出すことになる。これは水族館新時代の到来となるだろう。

お二人の革新的で大胆な計画には心からお祝いを申し上げたい。新水族館の開館後、加茂水族館はこれから何年にも渡ってクラゲの飼育展示を専門とする世界唯一のハイクオリティーな水族館として存在し続けるものと私は確信している。当然、今後何十年の間に加茂水族館からのクラゲについての新しい研究結果を日本国内だけでなく世界中で聞くことになるだろう。近い将来、新しく大きくなった加茂水族館は間違いなく世界の次世代水族館のモデルとなるだろう。

ユルゲン=ランゲ

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